れでおわり、もうさよならだ。

そう言って彼は嬉しそうに微笑んだ。世界人類にとっては不幸なこの終焉すら彼にとってはすべてのしがらみから解き放ってくれる救済に思えるのだろう。

僕は頷くこともできずただ曖昧に微笑んで彼の恐ろしくやせ細った肩を抱く。こぼれそうになる涙なんて彼に見せることはできない(彼をここまで追い詰めてしまった僕が泣くことなんて許されていいはずがない。許されるはずがないんだ)

肩を抱かれながらケタケタと笑いはじめた彼の瞳はあの頃と変わらずきれいなままで、それがまたひどく悲しみを誘う。ついにこぼれた涙は僕の手をつたい静かに地面に染みこんでゆく。

ごめんないごめんなさいごめんなさいと流れ出す言葉は彼の笑い声に乗って不確かな不協和音を紡ぎはじめた。

(もしこの世に神という存在がいるならばどうかお願いだ。次、生まれ変わることがあるならば彼に世界中の誰よりも大きな幸せを与えてあげてほしい。僕には世界中の誰よりも大きな不幸を与えてほしい。そしてどうか僕と彼が未来永劫二度と出会うことのないように、)